医療法人設立の要件

医療法人

いろいろ悩んだけど、医療法人設立しよう!って決意したんだ。
早速手続き始めるぞ~
医療法人を設立するにはいくつか必須の要件があるんだよ。
ちゃんと準備してる?

医療法人を設立するには、さまざまな要件を満す必要があります。
株式会社などの一般法人と似ているところもありますが、非営利の原則を守るため、医療法人には独自のルールが設けられています。

1.人的要件= 社員と役員

永続性と非営利性の実現のため、医療法人には原則、社員3名以上、役員として理事3名以上、監事1人以上を置くことが定められています。

社団たる医療法人は、社員総会、理事、理事会及び監事を置かなければならない。

医療法第四十六条の二

(1)社員

社員は株式会社の株主に近い存在で、正社員などの従業員とは異なります。
社員総会で医療法人の重要な事項を決議する権限を持ちます。

種類 必要な人数 役割・就任要件など
社員 原則3名以上
  • 社員総会において運営上の重要事項の取り決めを行います。
  • 一人1議決権を持ちます。
  • 必ずしも拠出者である必要はありません。

(2)役員

医療法人の役員には「理事」と「監事」があります。

「理事」は、理事会を開いて医療法人の運営上の取り決めを行います。
社員と兼任することが可能です。
理事長」は理事会において理事の中から選出されます。

法人の監査の役割を負う「監事」は、
理事や職員、理事の親族などとの兼任はできません。

また理事・監事ともに、
医療法人と関係のある特定の営利法人の役員との兼務はできません。
また、都道府県によっては未成年者は役員になれません。

種類 必要な人数 役割・就任要件など
理事 原則3名以上
  • 社員によって選出されます。
  • 理事会において運営上のさまざまな取り決めを行います。
  • 必ずしも医師である必要はありません。
  • 法人の開設する診療所の管理者は、理事に就くことが決められています。
理事長 1名
  • 理事より選出される医療法人の代表です。
  • 医師又は歯科医師でなくてはなりません。
  • 他の医療法人の理事長を兼務することはできません。
監事 1名以上
  • 医療法人の財産等の監査を行います。
  • 医師である必要はありません。
  • 理事又は従業員、理事の親族、医療法人に拠出している個人、取引・顧問関係にある個人(税理士、弁護士など)は監事になることができません。
社員と理事は家族になってもらうとして。
監事は……
……きつね君、お願いしてもいいかな!?
いいけど、ぼくの監査は厳しいよ!

2.資産要件=拠出する財産

医療法人は、業務に必要な資産を有していなければなりません(医療法第四十一条)。

現在一般的には、「基金」として法人に財産を拠出する方法を用います。

基金とは

基金とは社団医療法人に拠出された財産で、法人が拠出者に対して返還義務を負うものをいいます。
2007年の医療法改正により「持分あり」社団医療法人の新設が不可となりましたが、基金制度は「持分なし」の社団医療法人の活動資金の調達手段として設けられました。
一定の要件を満たせば、拠出者に返還が可能ですが、「非営利性」を維持するため、法人解散後の残余財産には含まれず、返還額は拠出した当時の額が限度とされています。

財産は以下の2種類に分けられます。

基本財産 不動産、運営基金など重要な資産
通常財産 基本財産以外の資産

基本財産は定款に記載しなければならず、処分する際には定款変更を伴います。
いったん基本財産として拠出すると、個人の資産に戻すことは非常に困難ですから、注意が必要です。(医療法人社団として設立する場合、基本財産の設定は必須ではありません)

(1)設立当初2か月分の運転資金

開業時には、初年度の年間支出予算2か月分相当の運転資金に見合う流動資産(現金・預金、医業未収金等)を用意しなければなりません。

保険診療収入が入金されるのはおよそ2か月先になるため、その間の運転資金を確保しておく必要があるからです。

拠出する運転資金について

(2)その他、医療法人の業務に必要な全ての資産

法人設立時には不動産、現預金、内装、各種設備、医療機器、備品等の業務に必要な資産を拠出し、有していなければなりません。

拠出金、いっぱい用意したほうがいいね!
借金もしちゃおう。
そんな無理しちゃって大丈夫なの…?

ここで、「拠出金を多くした方が審査が通りやすい」という勘違いを起こしやすいですが、無駄に預貯金を、ましてや借金までして必要以上に拠出しても得はありません。
当然のことですが、個人としての資金を手元に残すことも重要です。

負債の引継ぎ

設立の「要件」にはあたりませんが、法人化の際には負債の引継ぎについてもしっかり考える必要があります。

診療所の運営に必要な拠出財産の取得時に発生した負債は、医療法人に引き継ぐことができます。

負債を引き継ぐ際にはまず金融機関に相談の上、債務引継承認願、負債説明資料などの書類を、申請書類に添付します。

一方、運転資金の借入は法人へ引き継ぐことはできず、個人で返済していくこととなります。

3.その他の要件

土地や建物の賃貸借契約、リース契約の引継ぎ

診療所等の施設を開設する土地及び建物は法人の所有であることが望ましいですが、
賃借の場合は、契約の名義を個人から法人に変更し、引き続き賃借しても問題ありません。
ただしこの契約は長期間(10年以上)にわたるものであり、かつ確実なものでなくてはなりません。

賃貸借契約について

法人設立申請時は、法人の永続性や非営利性を保持するため、以下のような事項に注意します。

  • あらかじめ法人化について所有者の了解を得る。
  • 建物を転貸借により賃借している場合は、建物所有者の意思確認ができる書類(転貸承諾書等)を添付する。
  • 設立者、親族等、利害関係者が経営する企業等から建物等を賃借する場合、賃料の根拠資料を添付する。 他

診療に必要な医療機器などがリース契約の場合も同様に、契約を法人に引き継ぐ必要があります。

また、このような所有権が第三者にある物は、資産として計上せず、拠出財産には含めません。


いかがでしたか?
まとめると、
医療法人を設立する際には、

  • 人的要件(社員、理事、監事)
  • 資産要件(運営資金2か月分、その他設備など)

を準備せねばならず、かつ

  • 土地建物の賃貸借契約や、医療機器のリース契約を法人に引き継ぐこと

が求められている、ということになります。

こういった要件をあらかじめ知って準備しておけば、
いざ申請する際に、あまり慌てずに済むのかもしれません。

節税については、当サイトを監修して頂いた
提携の税理士に相談していただくことも可能です。