準備するものがとーーーってもたくさんあるよ。
鼻歌歌ってる場合じゃないと思うけどな…。
医療法人を設立するには、
主たる事務所の所在する都道府県知事の認可が必要です。(医療法第四十四条第1項)
認可のためにはまず仮申請をし、自治体の事前審査を受けることが必須となります。
令和元年の東京都(第1回・8月申請)を例に、まずはその準備段階から説明しましょう。
1.仮申請の準備(6月~8月下旬)
(1)「医療法人設立の手引」の入手
医療法人制度の概要と医療法人の設立手続等について概説した手引で、
東京都で病院・診療所等を開設する医療法人を設立する方を対象としています。
(2)社員、理事、監事の決定(6月ごろ~)
- 社員:
原則3人以上必要です。
拠出の有無は問われませんが、信頼のおける人物を選定しましょう。 - 理事:
原則3名以上必要です。
社員と兼任でも構いませんが、実際に法人の運営に参画できる者でなければなりません。 - 監事:
1名以上。
理事又は従業員、理事の親族、医療法人に拠出している個人、取引・顧問関係にある個人(税理士、弁護士など)は監事となることができません。
(3)設立説明会に参加(令和元年7月12日)、スケジュールの確認
東京都の場合、設立説明会への参加は必須ではありません。
説明会資料は、東京都福祉保健局のホームページからも入手できます。
全体的なスケジュールと書類作成に必要な基準日一覧も
東京都から提供されているので、必ず確認します。
(4)定款・寄附行為(案)の作成
医療法人の組織、運営等に関する基本を定めた定款案を作成します。
基本的には、自治体が作るモデル定款に沿ったものを作成すると良いでしょう。
定款の記載内容は下記の通り医療法で定められています。
医療法人を設立しようとする者は、定款又は寄附行為をもつて、少なくとも次に掲げる事項を定めなければならない。
一 目的
(医療法第四十四条第2項)
二 名称
三 その開設しようとする病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院(地方自治法第二百四十四条の二第三項に規定する指定管理者として管理しようとする公の施設である病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を含む。)の名称及び開設場所
四 事務所の所在地
五 資産及び会計に関する規定
六 役員に関する規定
七 理事会に関する規定
八 社団たる医療法人にあつては、社員総会及び社員たる資格の得喪に関する規定
九 財団たる医療法人にあつては、評議員会及び評議員に関する規定
十 解散に関する規定
十一 定款又は寄附行為の変更に関する規定
十二 公告の方法
すごくむずかしそう…。ぼくには無理じゃない?
専門家にお願いすると安心だね。
(5)財産目録の作成、負債の引継ぎ
診療所で使用している財産は原則として、医療法人に拠出するのが望ましいとされています。
また、 法人設立後2か月分以上の運転資金に見合う流動資産(現金・預金、医業未収金等)を拠出しなくてはなりません。
なおリース契約の医療機器や賃貸物件、消耗品、往診等に使用しない自家用車、医師会入会金などは基金として拠出できません。
財産目録の作成
拠出する財産を決定したら、以下の基準の都が定める基準日時点の評価額を算定し、財産目録を作成します。
財産 | 評価額 | 添付する資料 |
---|---|---|
土地・建物 | 不動産鑑定評価書・固定資産評価証明書の額 | 不動産鑑定評価書・固定資産評価証明書 履歴事項全部証明書 |
預金 | 残高証明書にある金額の範囲内の額 | 預金残高証明書 |
医業未収金 | 前年実績などからの推計額 | 直近の保険診療報酬通知書 |
敷金・保証金 | 契約書の記載額 ※契約書で償却について記載がある場合は、償却後の金額 |
賃貸借契約書 |
車両 | 基準日時点の簿価 | 減価償却計算書 車検証の写し 使用目的及び使用目的以外には使用しない旨を記載した書面(設立代表者名で作成) |
その他減価償却資産 | 基準日時点の簿価 | 減価償却計算書 購入した際の契約書・請求書及び領収書 |
現物拠出する財産の価額の総額が500万円を超える場合は、「現物拠出財産の価額が相当である証明」が必要です。
負債の引継ぎ
医療法人に引き継ぐごとができる負債の条件は下のとおりです。
- 拠出財産の取得時に発生
- 借入日より後に支払いを行っている
- 拠出と同時(法人設立時)に引き継ぐ
引き継ぐ際には、債務者に負債の引継ぎが可能であるか確認し、以下のような書類を用意します。
- 負債残高証明及び債務引継承認願(債務者ごとに作成)
- 借入契約書(金銭消費貸借契約書など)
- 借入金で取得した資産の契約書又は請求書及び領収書
(例)売買契約書、工事請負契約書、領収書等 - 返済予定表
なお運転資金の借入は法人へ引き継ぐことはできず、個人で返済していくこととなります。
(6)必要書類の収集(7月~)
(5)で用意した財産や借入れの関連書類のほかに、以下のような書類を用意します。
この時点でリース会社や、不動産の貸主への連絡も必要となります。
- 役員や社員になる人の印鑑証明書、履歴書
- 役員になる方の医師免許証の写し(監事は不要)
- 診療所の開設届及び変更届の写し
- 診療所の図面
- リース契約書及び支払予定表(リース会社への打診、押印)
- 不動産賃貸借契約書の写し(貸主への打診、押印)
- 確定申告書(2年分)
など
リース会社やビルの貸主さんに連絡するのも忘れないでね。
(7)事業計画及び収支予算の作成
準備するのは以下の書類です。既定の様式があります。
書類名 | 対象期間 | 注意事項 |
---|---|---|
事業計画書 | 2か年又は 3か年 |
法人の初年度が6か月未満の場合は3年分 |
予算書 | 2か年又は 3か年 |
法人の初年度が6か月未満の場合は3年分 |
予算明細書 | ||
職員給与費内訳書 | ||
実績表 | 2年分 | 診療所等の2年分の確定申告がない場合は、 申請の直近までの試算表を添付すること。 |
(8)設立総会の開催(7月~8月)
3名以上の設立者が集まって定款を定めた後、設立時に決定すべき事項(下記)を設立者が集まり意見を述べて決議します。
決議した事項は議事録に記載し(設立総会議事録)、設立認可申請書に添付しなければなりません。
(医療法第四十四条第6項、医療法施行規則第三十一条第3号)
- 医療法人設立趣旨承認
- 社員確認
- 定款承認
- 基金拠出申込および設立時の財産目録承認
- 役員および管理者選任
- 設立代表者選任
- 診療所の土地、建物を賃借する場合の契約の承認
- リース契約引継ぎ承認
- 会計年度、初年度分の事業計画および収支予算承認
- その他の必要事項
(9)設立認可申請書の作成(8月半ば~)
設立認可申請書を様式に合わせて作成します。
様式等は東京都福祉保健局のホームページからダウンロードします。
その他、この時期までに仮申請時に必要な書類をすべてそろえておきましょう。
2.仮申請(8月末)
いよいよ仮申請だよ。
提出期限が限られているから気を付けてね。
書類の用意が大変で、ずいぶん痩せちゃったみたい…
本申請に必要な書類一式すべてを揃えて提出します(令和元年8月26日~8月30日)(郵送のみ※)。
提出部数は1部です。
※提出方法は変更される可能性があります。
この時点で申請書類への捺印は不要ですが、
捺印をお願いする関係者にはこの時期から連絡をしておくと良いでしょう。
仮申請では土地・建物の登記事項全部証明書等、印鑑登録証明書などの公的証明書類の写しも提出しますが、仮申請書類は返却されませんから、原本は提出しません。
申請書類の構成は以下の通りです。
「〇」のついた書類は、公式に用意された様式があります。
〈総括部分〉
書類名 | 様式 | 注意事項 |
---|---|---|
受付表 | 〇 | 東京都ホームページから直近の申請時期に ダウンロードしたもの |
医療法人設立認可申請書 | 〇 | 日付は東京都が指定した日 |
定款(寄附行為) | モデル定款あり | |
設立総会議事録 | 〇 | 仮申請より以前の開催日付 |
〈財産関係〉
書類名 | 様式 | 注意事項 |
---|---|---|
財産目録 | 〇 | 基準日あり |
財産目録明細書 | 〇 | 基準日あり |
不動産鑑定評価書 | 不動産を拠出する場合 | |
減価償却計算書 | 〇 | 基準日あり |
現物拠出の価額証明書 | 基準日における証明 | |
基金拠出契約書 | 〇 | 基金制度を採用する場合 |
拠出(寄附)申込書 | 〇 | 基金制度を採用しない場合 |
預金残高証明書 | 仮申請時点で発行から3か月以内のもの | |
診療報酬等の決定通知書 | 直近2か月分(未収入金を拠出する場合) | |
設立時の負債内訳書 | 〇 | 基準日あり |
負債の説明資料 | 〇 | |
負債の根拠書類 | 金銭消費貸借契約書及び支払予定表 借入金で取得した資産の契約書又は請求書及び領収書 (例)工事請負契約書、領収書等 |
|
債務引継承認願 | 〇 | 債権者ごとに作成 |
書類名 | 様式 | 注意事項 |
---|---|---|
リース物件一覧表 | 〇 | 資産計上しないリース契約の場合に添付 物件名、数量、業者名等を記載 |
リース契約書(写し) | 現行のものの写し | |
リース引継承認書 | 〇 | リース会社ごとに作成 |
〈人事関係〉
書類名 | 様式 | 注意事項 |
---|---|---|
役員・社員名簿 | 〇 | 基準日あり |
履歴書 | 〇 | 設立総会の日付 |
印鑑登録証明書 | 仮申請時点で発行から3か月以内のもの | |
委任状 | 〇 | 設立総会の日付 |
役員就任承諾書 | 〇 | 設立総会の日付 |
管理者就任承諾書 | 〇 | 設立総会の日付 |
理事長医師免許証(写し) | 原寸大 | |
管理者医師免許証(写し) | 原寸大 | |
理事医師免許証(写し) | 原寸大 ※監事は不要 |
〈施設関係〉
書類名 | 様式 | 注意事項 |
---|---|---|
診療所等の概要 | 〇 | 病院、診療所、介護老人保健施設及び介護医療 |
施設等の概要 | 〇 | 附帯業務の場合 |
周辺の概略図 | 最寄り駅等、交通経路を表示する | |
建物平面図 | 1/50~1/100程度のもの | |
不動産賃貸借契約書(写し) | 転貸の場合は原契約も必要 | |
賃貸借契約引継承認書(覚書) | 〇 | 貸主ごとに作成 |
土地・建物登記事項証明書 | 契約の目的物となっている建物等 仮申請時点で発行から3か月以内のもの |
|
近傍類似値について | 〇 | 設立しようとする医療法人の利害関係者等から物件を賃借する場合のみ添付 |
〈計画・予算・実績〉
書類名 | 様式 | 注意事項 |
---|---|---|
事業計画書(2か年又は3か年) | 〇 | 診療所開設時から 法人の初年度が6か月未満の場合は3年分 |
予算書(2か年又は3か年) | 〇 | 診療所開設時から 法人の初年度が6か月未満の場合は3年分 |
予算明細書 | 〇 | 診療所開設時から |
職員給与費内訳書 | 〇 | 診療所開設時から |
実績表(2年分) | 〇 | 診療所等の2年分の確定申告がない場合は、 申請の直近までの試算表を添付すること。 |
確定申告書(2年分) | (1)申告書(第一表、第二表) ※個人番号(マイナンバー)が表示されないよう「控用」の写しを添付 (2)所得税青色申告決算書 (3)所得の内訳書 (4)所得税青色申告決算書(一般用)付表 ≪医師及び歯科医師用≫ |
|
診療所の開設届 | 個人診療所の開設実績のある場合 | |
診療所の変更届の写し | 開設届提出後に変更がある場合 |
これらの書類をすべて用意し、
都が提供するチェックリスト(pdf)順に並べた上でダブルクリップで留め、提出期間内に提出します。
審査には3か月くらいかかるよ。
その間にもやることはあるけど、ちょっと一休み。後半戦もがんばろう!
たくさん食べて、大事な脂肪を取り戻さなきゃ。
(本記事は令和2年1月31日時点の情報を基に書かれています)